オレンジページを動かす、さまざまな部署の個性的なメンバーたち。それぞれのワークスタイルから、多岐にわたる業務やオレンジページのカルチャーが見えてきます。今回話を聞いたのは、モノクリエイト部とeビジネス推進部を兼任する志賀園子。キャラクターグッズやオリジナルグッズを生み出し発信する日々の苦労や楽しさ、アイデアの源などについて話します。


2足のわらじで商品開発から販路開拓、営業や広報まで

—まずは、モノクリエイト部とeビジネス推進部での志賀さんの役割について教えてください。

志賀園子(以下「志賀」):モノクリエイト部では、JR東日本の交通系ICカード「Suica」のキャラクターである「Suicaのペンギン」のグッズや、鉄道のオリジナルグッズなどを制作しています。私自身の業務としてはそちらが7割くらいで、あとはeビジネス推進部のEC担当として、JR東日本が運営する通販サイト「JRE MALL」にある「オレンジページ shop」で販売するオリジナル調理道具の開発を担当しています。

eビジネス推進部では商品開発のほか、商品を紹介するために雑誌『オレンジページ』や『オレンジページCooking』に通販誌面を制作。WEBメディアの「オレンジページnet」では、Suicaのペンギンの新商品情報などを発信する「SuicaのペンギングッズRoom」の更新や、オリジナル調理道具のブログを担当しています。

—出版社というイメージが大きいオレンジページで、ものづくりの部署があるということはあまり知らない方も多いのではないでしょうか。

志賀:以前は出版物として、イラストレーターのさかざきちはるさんによる4コマ漫画エッセイや、Suicaのペンギンのダイアリーや手帳を主に刊行していて、その後、オリジナルグッズもつくるようになりました。販売場所は、通販サイトのほかに東京駅や秋葉原駅などにあるショップに卸していて、おかげさまで売上も順調に推移しています。

ⒸChiharu Sakazaki/JR東日本/DENTSU
※SuicaはJR東日本の登録商標です。
※SuicaのペンギンはJR東日本のSuicaのキャラクターです。

—eビジネス推進部でも、調理道具など仕入れたものを紹介するのではなく、オリジナルの商品を開発されているのですね。

志賀:はい、そうなんです。昨年まったく新しい取り組みとして、文筆家のツレヅレハナコさんとのコラボレーションで「ふたつき鉄製揚げ鍋・18㎝」をつくりました。これはツレヅレハナコさんのInstagramの投稿がきっかけとなった企画で、製造メーカーを選定したりサンプルをつくったり、実際に工場の製造現場を見に行ったりしながら、1年以上かけて開発しました。私たちがつくりたかったのは、なんにでも使える万能な鍋というよりも、料理に向かう気持ちのスイッチを入れるようなものです。金型からこだわってつくった完全オリジナルなのでお値段はそれなりにしますが、ユニークな揚げ鍋ができたと自負しています。

※オレンジページnet「ツレヅレハナコさんと『理想の揚げ鍋』作りました!」

本体、揚げ網、ふたがセットになったこだわりの「ふたつき鉄製揚げ鍋・18㎝」。綿密な打ち合わせを重ねて作られた。

—志賀さんは商品の企画から販売まで、一貫して関わっているのでしょうか?

志賀:そうですね。出版物だと販売や営業は別の部署に委ねますが、調理道具を開発する通販チームは、商品の企画から完成までのほかに、商品に同梱する小冊子の制作もしますし、店舗への営業、在庫管理も私やチームのメンバーが動いています。揚げ鍋については、弊社の体験型スタジオ「コトラボ」で揚げ鍋つきの料理講座を開催したり、百貨店の料理セミナーや催事での販売なども行いました。

アイデアの源はフォロワーとのコミュニケーション

—志賀さんの1日の時間の使い方を教えてください。

志賀:朝はだいたい9時くらいに出社して、まずはメールの返信などをします。そのあと、会社に届いたサンプルをチェック。メーカーとの細かい仕様の確認は電話で話しながら進めることも多いですね。

2週間に一度、午後からは「ペンギンミーティング」と呼ばれる、Suicaのペンギングッズチームでのミーティングがあります。ペンギングッズは年間に130〜140種ほど出しているので、年度内に発売予定のグッズの進行を確認したり、販促を検討したりします。ほかにも、グループ会社が出すSuicaのペンギングッズや、人気のキャラクターグッズやイベント状況などの共有もしています。ミーティング終了後は、eビジネス推進部で開発中の調理道具のデザイン調整や下代交渉などを行い、19時頃に退社することが多いです。

—年間でかなりたくさんのグッズがリリースされているのですね。

志賀:そうですね。モノクリエイト部のメンバーはだいたい、自分の担当ではない商品の内容も頭に入れています。私はSNS発信も担当しているので、それぞれの商品の発売時期や情報解禁日などは、ペンギンミーティングで常に確認するようにしています。

—仕事をしていてよろこびを感じるのはどんなときでしょうか?

志賀:やっぱり、まずは「売れる」ことでしょうか。Suicaのペンギンは40歳以上のちょっと大人の方がメインターゲットなので、腕時計や帆布のバッグなど、少し価格が高いものでも買ってくださるというのはとても嬉しいですね。20年以上前にSuicaのICカードが誕生したときにペンギンにも出会ったという年齢層の方が多く、熱量の高いファンの方に支えられているなと思います。あと、Suicaのペンギンのダイアリーやカレンダーの描きおろしのイラストが本当にかわいいので、担当としてそれを発売前の一番最初に見られるというのは幸せだなあと感じます。

—SNSではどういったコミュニケーションが生まれていますか?

志賀:「『Suicaのペンギン』グッズ担当@オレンジページ」というX(旧Twitter)を運営しています。これは弊社のアカウントですが、Suicaのペンギンファンのみなさんは、私たちの商品に限らず新しい商品が発売されるとすごく喜んでくださるので、他社のものでも一生懸命アピールするようにしています。

フォロワー数はそこまで多くないのですが、投稿にはたくさんの反応があります。紹介したグッズについて「発売初日にゲットしました!」とか「こういうふうに使っています」と教えてくれる方がいたり、なかには画像付きでアドバイスをくださる方や、かなり真剣なコメントをいただいたりすることも。たくさんの気づきをもらい、フォロワーさんの力を借りて運営しています。

働き方も暮らし方も柔軟に。選択肢を広げられる生活実装

—苦労していることや大変だなと思うことなどはありますか?

志賀:グッズ制作においては、残念ながら不良品が出てきてしまうということがあります。それが、検品作業をすり抜けてお客さまの手に渡ってしまうことも。その場合にはもちろん交換対応などをしますが、出張などで遠くから東京に来て買ってくださったり、贈り物として選んでいただくことも多いので、不良品に関しては本当に申し訳ない気持ちです。

また調理道具については、プロジェクト自体はとてもおもしろいしやりがいのある仕事ですが、企画から実際にできあがるまでに時間がかかるんです。いつ利益が取れるんだろう、途中で頓挫したらどうしようなど、常に心配は抱えていますね。ただ、第一弾の揚げ鍋は実績がよく、社内でも理解を得やすくなったことで第二弾の「ミニサイズ揚げ鍋」が進められたのはありがたかったなと思っています。

—オレンジページの働き方やカルチャーで気に入っているところはどのようなところでしょうか?

志賀:部署にもよりますが、モノクリエイト部はずっと会社でデスクワークするという働き方ではなく、ある程度個人の裁量でスケジュールを組んで働いています。たとえば、他キャラクターグッズの展覧会やポップアップ店を見に行ったり、まだ企画にはなっていないけれど興味のある料理家さんの講座に参加したりする日もあります。

また、部内のミーティングは、みんなが自由に発言できる雰囲気があります。特にものづくりをしている部署なので、まだまとまっていないアイデアや思いつきでもを聞いてくれる上司がいるというのは助かりますし、社風としていいところだなと思います。

—志賀さんはどのように「生活実装」を実践しているのでしょうか。

志賀:自分の食べるものを自分でつくるのが当たり前になっているので、普段の生活のなかで「生活実装」と意識することはあまりないかもしれません。そのうえで思うのは、料理や家事ができると、そのぶんほかの選択肢も選べるということです。外食したり出来合いのものを買うこともできるし、自分でつくることもできる。自由度が広がるような気がしています。

—自分の好みに合わせた食や暮らしが選べるということですね。普段はどんな料理をしていますか?

志賀:趣味というか、ジャムづくりが好きでよくつくっています。ジャムは果物と砂糖だけでできるし、色がきれいで癒される。そして意外と簡単につくれるんです。また、揚げ鍋をつくったからというわけではありませんが、揚げ物も普段からよくつくります。だからこそ健康で、揚げ物をつくる意欲や食欲をずっともっていたいと思っています。そういう意味では、自分のなかでは生活実装というよりも「健康」がテーマになっているかもしれません。料理ってやっぱり意欲が必要なので、自分の体力と体調に合わせて、つくりたいと思ったときにつくる。しばらくお休みしたいというときは休む、ということでよいのではと思います。