みたけ食品工業株式会社(以下「みたけ食品」)とオレンジページのコラボ商品、『大豆粉と米粉のパンケーキミックス』の発売から10年。「長く愛される商品をまたつくりたい」という思いから再び共同開発が始動し、身体にやさしいだけでなく、おいしさと作りやすさにこだわった『大豆粉と米粉のパンミックス』と『大豆粉と玄米粉のお好み焼粉』が誕生しました。開発を担当したみたけ食品の堀 直樹さんと、オレンジページの姜 明子・松瀬佳美・竹内めぐみが、2度目のコラボレーションを振り返ります。


ロングセラー商品を振り返り、生活者のニーズを知ることからスタート

—開発の総合ディレクターを務めた姜さんは、10年前のパンケーキミックスの開発にも携わっていました。みたけ食品との最初のコラボレーションのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

姜 明子(以下「姜」):読者の声を聞き、暮らしに寄り添う「生活情報誌」として、1985年に雑誌「オレンジページ」を創刊し、たくさんの「生活者の声」を聴く機会に恵まれてきました。
2010年頃だったでしょうか、「自分でつくったものは特別な味わい」「手間をかけてつくる丁寧な時間を楽しみたい」という声が頻繁に聴かれるようになりました。

そこで、「自分自身で素材を育て、旬の時期に収穫をし、味わう」という「丁寧なくらし」を提唱しようと、長野県上田市の遊休荒廃地をお借りし、育てやすい「大豆」の栽培を始めることになりました。収穫体験や収穫大豆での「みそ仕込み会」を展開し始めたころ、テレビ東京の番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の「大豆」をテーマにした特集で、同時に取り上げていただいた「みたけ食品」さんと出会い、「一緒に大豆を盛り上げていきましょう」と企画を練りました。当時はパンケーキブームの最盛期。「家族に食べさせたいパンケーキ」をコンセプトに、試行錯誤のうえ、味も身体にも、そしてパッケージデザインまでにも「やさしい」があふれたパンケーキができあがりました。

第1弾に続き、みたけ食品とのコラボレーションでの開発全体を統括した姜 明子。

—当時の反響はいかがでしたか?

堀 直樹さん(以下「堀さん」):パンケーキミックスは家族に食べさせたいものとして「安心・安全」というコンセプトがありましたが、やはりおいしさへの反響が大きかったようです。しっとりふわふわな食感を出すための、米粉の粒の大きさや大豆粉との配合に苦労したと聞いています。

竹内めぐみ(以下「竹内」):パッケージのデザインも大きかったと思います。スーパーに並んでいるものを見ると、パンケーキの写真をメインに使っているものがほとんどであるなか、かわいいイラストでほかとは違う優しい雰囲気を出していました。

—10年ぶりのコラボ商品となった『大豆粉と米粉のパンミックス』と『大豆粉と玄米粉のお好み焼粉』はどのようなものでしょうか?

堀さん:パンミックスのコンセプトは「休日に家族に食べさせたい」です。前回と同じく国産の米粉と大豆粉を100%使用しています。パンなのに発酵いらずで、水と油さえあればフライパンでつくることができる。気軽に、簡単につくれるというポイントを重視しました。お好み焼き粉は国産の大豆粉と玄米粉を配合し、ふっくらした食感に。小麦のお好み焼き粉よりも食物繊維が豊富で、手軽に栄養が摂れる商品です。

商品開発や試作、製造に携わった、みたけ食品の堀 直樹さん。

—オレンジページとみたけ食品とのコラボレーションだからこそできたことや、強みになったところはありましたか?

堀さん:『オレンジページ』という雑誌やウェブサイトを通した読者さんとの結びつきは、とても強みになっています。生活者の意見を直に集めてくださっているので、今回のパンミックスもお好み焼き粉も、しっかりとニーズを捉えられたと思います。

姜:そこは私たちが創刊以来ブレずに続けてきたところです。パンケーキミックスでも、
読者会員組織であるオレンジページメンバーズにアンケート調査を行い、生活者の視点に寄り添ったものができました。今回も1000名強もの会員の声を集め、パンケーキミックスがなぜ支持されたのか、新たにつくる商品にはどのようなものを求めるかなどをしっかりと調査しました。

—パンミックスとお好み焼き粉というラインナップにも、オレンジページメンバーズの声が反映されているのでしょうか?

竹内:そうですね。実は、最初はプロジェクトメンバーのなかだけでなにをつくるか話し合っていました。お菓子系、流行りのもの、まだ市場にないものなど、いろんなアイデアがありました。ただ、ふとパンケーキミックスを振り返ってみたときに、10年も愛されてきたこの商品の、どのようなところが人気の鍵になっているのか、なにが求められているのかをあらためて調査し、きちんと整理したうえで第2弾の商品化をするべきだと感じました。

そうして、オレンジページメンバーズにアンケートをとることになりました。アンケートでは、そもそもお菓子づくりをするか、普段どのようなミックス粉を使っているかなど、商品についての質問や、どのような調理器具だったらつくりやすいかなど、かなり細かいことも質問させていただきました。その結果、パンミックスとお好み焼き粉という2種類を商品化することに決まりました。また、どの家庭にも日常的にある材料で、フライパンでできるものという点も、大きなポイントだと考えました。

左から、第1弾のコラボ商品『大豆粉と米粉のパンケーキミックス』、今回誕生した『大豆粉と米粉のパンミックス』、『大豆粉と玄米粉のお好み焼粉』。

「安全・安心」そしてちゃんと「おいしい」ものを

—開発の過程でこだわった点や苦労したところを教えてください。

松瀬佳美(以下「松瀬」):基本的には第1弾のパンケーキミックスのコンセプトである「安心・安全」を踏襲しつつ、「家族で食べられるおいしい味」にこだわりました。小麦粉ではなく米粉を使うことにはグルテンフリー、大豆粉を使うことには糖質を抑えるなどのメリットもあるので、そちらに比重を置くこともできますが、私たちが求めるのはやっぱり“おいしさ”なんだということを常に意識しました。

商品提案や試作、レシピ確認を担当した松瀬佳美。

堀さん:おいしさの面では、たとえばパンミックスは大豆粉を使っていますが、毎日食べられるものと考えると、あまり大豆が主張しすぎずふわふわ感のある仕上がりにしたい。風味の出し方や食感を細かく調整しました。お好み焼き粉については、米粉を使うともちもちしすぎてしまう、歯に残るような食感になってしまうという課題がずっとありました。その課題をクリアするような大豆粉と米粉の配合については何度も比率を変えてチャレンジし、最終的に一般的な精白米の米粉ではなく「玄米粉」を使うことになりました。

竹内:大豆粉と米粉の配合は、少しの割合の変化で味が随分変わるのです。大豆粉はこのシリーズの特徴ですが、入れれば入れるほど匂いが気になってしまう。私たちはおいしさと栄養の両方を追求したかったので、細かく割合を変えて試作していただいたものを、かなり食べ比べしました。特にお好み焼き粉は何度も配合を変えて試作し、課題を持ち帰り、また打ち合わせして試作して……ということを繰り返しましたね。

玄米粉は私たちの発想にはなかったもので、みたけ食品さんが最後の最後に玄米粉に変える提案をくださいました。試作を食べてみると、玄米粉は精白米の米粉と特性が違い、水分を含みにくいのでべちゃっとした食感にならず、玄米の風味が加わって香ばしさも増していました。

堀さん:普通の玄米粉だと匂いが苦手な方もいるかもしれませんが、弊社の製粉技術で匂いが気にならない、食べやすい玄米粉にしています。そこに大豆の旨みが加わり、相乗効果で本当においしいお好み焼き粉になりました。

姜:あの時の試作ではみんなで感動しましたね。

—パンケーキミックスに続き、今回のミックス粉もパッケージがとてもかわいらしいですね。こちらも前回のスタイルを踏襲したのでしょうか。

竹内:そうですね。第1弾のパッケージへの人気は認識していましたので、パッケージデザインから受け取る商品の温かみはぜひ継承したいポイントでした。また、パンミックスとお好み焼き粉は第2弾としてシリーズになるので、3つ並べたときのバランスも意識してイラストや色使いなどを調整しました。

みたけ食品との窓口となり関係各所の調整役を務めた竹内めぐみ。

日常の食を豊かにするのは手軽さと楽しさ

—オレンジページメンバーズの声をもとに開発された2種類のミックス粉ですが、完成した商品への反応はいかがですか?

姜:完成後、「オレンジページnet」でブログを書いてくださっているオレペエディターのみなさんに商品をお渡しし、それぞれのミックス粉のレポート記事を作成していただきました。スタンダードに使っていただくのはもちろん、パンミックスでバナナケーキやパウンドケーキをつくるなど、それはそれはさまざまにアレンジして、オリジナリティあふれるレシピを投稿してくださっています。

松瀬:パンケーキミックスのときもそうでしたが、今回のパンミックスもアレンジメニューがいろいろできるということを特徴にしています。シンプルな素材で、フライパンで簡単につくれるからこそ自由度が高いんです。オレペエディターのみなさんからの投稿には、私たちの想像を超えるような工夫がたくさんあって驚きました。みなさん自分の好みや家族のスタイルに合わせて組み合わせを考えて使っているので、本当に参考になると思います。

姜:アンケートに答えてくださったメンバーズや、レシピを投稿してくださるエディターのみなさんも、生活のなかで「食」をすごく楽しんでいらっしゃる。この商品を使って、さらにその楽しみが拡がっている様子を拝見できることは、開発者冥利に尽きます。

—第2弾の開発を振り返っての感想をお願いします。

堀さん:やはりオレンジページメンバーズの方々へのアンケートで生活者の方の声を聞き、ニーズを捉えたものができたというのはとても大きかったです。そのおかげで粉の配合や食感、品質などの細部の検討の段階になっていっても、妥協するのではなく「おいしい」という軸を確認しながら進められましたし、その生活者の声がモチベーションになっていたと感じます。

松瀬:私も堀さんと同じく、アンケートの声を反映したものをつくれたことがとてもうれしいです。お好み焼き粉の配合を何度も試作して終わりが見えなくなっている時期もありましたが、玄米粉にたどり着いたときは、みたけ食品さんと気持ちがひとつになれた瞬間でした。思い出深く楽しい商品ができたと思っています。

竹内:アンケート調査から完成まで、それぞれの段階で関わってくださった方がたくさんいて、その都度丁寧に課題に向き合ってきたからこそ、今回のふたつの商品ができあがったと感じています。みたけ食品さんの粉や製粉に関する知見と、私たちが持つ生活者としての目線をお互いに確認し合いながら前に進めたのはとても良かったですね。商品が完成して、実際はここからがスタートなので、オレぺエディターのみなさんがつくってくださったように、たくさんの家庭でいろんな使い方をしていただき、どのような商品になっていくのかがとても楽しみです。

姜:やはり、企画の段階で生活者の目線に立ったことがとても大きかったと思います。アンケートを読み込み、「あったらうれしい」と思うもの、そして普段使いに手放せない「フライパン」を使いたいという気持ちを丁寧に拾いました。あらためて、“答えは生活のなかにある”ということを学べた時間だったと思っています。

—今後、パンミックスとお好み焼き粉はどのような商品に育っていってほしいですか?

堀さん:おいしいパンはあちこちで売っていますが、「家でもおいしいパンがつくれるんだった」と、休みの日に気軽につくってもらえるような、長く愛される商品に育っていってほしいです。お好み焼き粉は市場にたくさんの種類がありますが、大豆粉と玄米粉を使ったお好み焼き粉はこれが初めてだと思うので、健康にも役立つお好み焼き粉ということで手に取ってもらえたらうれしいです。

松瀬:もっともっと生活に入っていく商品になればいいなと思います。パンケーキもパンもお好み焼きも、そんなに気張らずに思い立ったら使ってもらえるものになってほしいです。ひとり分でもつくりやすいようなサイズで、材料も家にあるもので30分もあればできるので、日常のなかでいつでも気軽に手に取れる商品になればと思います。

姜:「おいしく、やさしく、簡単に、誰もが食べられるもの」。それが、どの商品にも共通している私たちの想いです。このシリーズをたくさんの方にご愛用いただき、今日も明日も笑顔がこぼれる食卓であってほしいと願っています。

撮影時には、もうひとりのプロジェクトメンバーであるみたけ食品の安部知宏さん(右から2番目)も同席。